上野
山手線 上野駅

上野恩賜公園

商店街一覧

蝉時雨、氷の幟旗、子供たちの短い影。

夏本番。
朝から茹だるような暑さだ。
今日訪れたのは上野駅。
商店街を訪ねて来たのだが、太陽と人いきれにたまらず、
今日は商店街ではなく上野恩賜公園を歩くことに。
案の定、公園は入り口から緑が濃く、木の影が暑さを凌いでくれる。
蝉の大合唱に迎えられて階段を上って行くと
薩摩犬を連れた西郷隆盛の像がすっくと立っている。
近くの瀟洒なカフェレストランでは
青い目の人たちがお茶を楽しんでいる。
木陰を選んで歩いて行くと美術館に人の長い列ができていた。
上野の森美術館で開催されている「大ゴッホ展」に訪れた人たちの列だ。
美術館の向かいにある正岡子規記念球場には
野球を楽しむ人たちの姿が見える。
園内を散策していて目立つのは海外からの旅行者。
夏休みだからだろう、子どもの姿も多い。
公園には様々な博物館や美術館があり、
人々は思い思いの入り口に吸い込まれていく。
公園内では新しいカフェやキッチンカーが複数営業している。
そんな中、動物園の近くで
子供の頃に見覚えのある甘味処が店を開けていた。
「鶯団子」の看板を掲げた新鶯亭だ。
新鶯亭の隣に歴史を感じさせる売店を発見。
トタン張りの店先には「おでん」「おぞば」
「ラーメン」「ソフトクリーム」の旗が下がっている。
軽食や喫茶を愉しめる店だ。
僕の上野公園内の店舗のイメージはこのような売店だ。
その「東照宮第一売店」の女将さんに話を聞くと、
店は70年以上続いており、
昔は園内に同じような売店がたくさんあったのだが、
その多くは姿を消してしまったとのこと。
たしか売店の前には小さな遊園地があったと記憶しているのだが、
その遊園地も無くなってしまったようだ。
「東照宮第一売店」に立つ「氷」の幟を見て、
子供の頃、度々父に聞いた話を思い出した。
東京生まれの父は戦時中、福島県へ集団疎開をしていた。
日本が負けて戻ってきた駅が上野だった。
上野駅で子供たちは迎えに来た家族に引き取られていったのだが、
ゾウさんというアダ名の身体の大きな喧嘩の強い子の家族は
誰も迎えに来なかった。
空襲でみんな逝ってしまったのだ。
ゾウさんは一人上野駅に置き去りにされた。
時が経ち高校生になった父が八月の上野公園でかき氷を食べていると
体の大きな男がこちらを見ている。
白いシャツに刺青が薄く透けて見える。
男はしばらくすると立ち去って行った。
父はその時、ゾウさんに声をかけられなかったそうだ。
今、公園で元気に遊んでいる子供たちを
誰一人としてゾウさんにしてはならない。
少しキナ臭い世の中になってきた昨今。
父の思い出話が胸に沁みる。

案内人:小林猛樹
写真はこちら

案内人

商店街。ひと、もの、あじ

商店街。MAP

  • ●住所
     ・台東区上野公園

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