北千住駅東口。
駅前にある千住旭町商店街は、
以前訪れた商店街だ。
千住旭町商店街を東に進むと細い路地があった。
路地に入って歩いて行くと、
傘が付いた丸い電球の街路灯が見えてきた。
街路灯の看板には
可愛らしいキャラクターのイラストと共に
「柳原商栄会」と書いてある。
駅前の喧騒とは一線を画す通りを歩き始めて
最初に目に入って来たのは
赤と白のツートンカラーのサンシェード。
看板には「パン工房 かわぐち」の文字。
店に入ると中にいた先客が
ミックスサンドが欲しいのだが
キュウリが苦手なのだと女将さんに話している。
女将さんは
「じゃあキュウリを抜いたミックスサンドを作りましょうか」
と気さくに応じている。
店の人気は食パンとサンドイッチ。
創業した1955年から、その人気は変わらない。
きっと女将さんの人柄も店の人気の一因なのだろう。
通りを先に進むと左に入る通りに、
たくさんのビールケースが見えた。
行ってみると、そこは「池田屋酒店」。
店の棚には日本酒のラインナップが豊富だ。
冷蔵ケースの上には寿の文字が入った角樽が置かれている。
少し古びた朱色が店の歴史を静かに語っている。
元来た通りに戻り先に進むと十字路あった。
その交差する通りにはレンガが敷かれている。
レンガの道を右に行くと紅白の提灯が並んだ
賑やかな店舗を見つけた。
店は雑貨店の「なかね」。
中に入ると店主夫妻が二人並んで座っている。
ご主人は犯罪や非行を犯した人の
更生を支える保護司を長年務めてきた。
店には法務大臣から贈られた表彰状も飾られている。
ご主人に聞くと、
レンガの敷かれた通りは柳原商栄会とは別で、
柳原銀座という商店街だったそうだ。
昔は店の前の通りがメインの商店街で、
駅前などより賑わっていて毎日が
お祭りのようだったと話してくれた。
レンガの通りをさらに進むと
趣のある平屋の店舗が出てきた。
店舗の外壁には「牛窪陶器店」と記されている。
店には茶碗、小皿、急須、
徳利などの様々な食器が所狭しと並んでいる。
店主に聞くと陶器店は東京でも数少ないので、
遠くからも客が足を運んで来るのだと話してくれた。
柳原商栄会に戻って、
さらに進むと丁字路の右手に銭湯があった。
「大和湯」は、なかなか立派な宮造りだ。
その先では鮮魚店もシャッターを上げている。
稲荷寿し店の前に街路灯に付いている看板が飾ってあった。
見ると可愛いイラストは「キデンキくん」と言うらしい。
調べてみると、キデンキ（木電気）とは
傘のついた電球を木の電信柱に取り付けたものとある。
昔は僕の家の近所の路地にも木電気があったな。
記憶の彼方から、ぼんやり灯る裸電球が浮かんできた。

案内人:小林猛樹
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