荻窪
中央線 荻窪駅

八丁通り商店街

商店街一覧

赤鬼の笑顔に心和む。

とても寒い日だ。
一月に入ってから本格的な冬を感じる。
空は青く快晴だが、冷たい北風が顔に当たって痛い。
駅を降りるとダウンコートを着込んだ人が足早に歩いている。
そんな日、八丁通り商店街を訪れた。 荻窪駅から徒歩で15分ぐらいのところに八丁通り商店街はある。
八丁通りというから、
この辺りに八丁目が存在するのかと思ったがそうではないらしく、
この地に今川義元の末裔の領地があり、
その屋敷の長さが「八丁」あったことからその名がついたようだ。
青梅街道に沿うこの商店街は、
環状八号線が交差した四面道交差点から始まっている。
大きな音を立てて行き交う路線バスを横目に、
静かな住宅街をはさみながらお店が続いている。 歩き始めてすぐにカフェがあった。
ガラスを通してやわらかい陽射しが大きく差し込むお店。
外から覗くと天井の高い店内、見上げると2階にも座席があるようだ。
店内に入ると「いらっしゃいませ!」明るい声が響く。
袋詰めされた色々な種類のコーヒー豆が棚に並んでいる。
カウンターのショーケースには美味しそうなブラウニーやスコーンも。
奥の方に業務用なのか、巨大な焙煎機が置かれており
麻袋が横に積まれている。
その様子はまるで工場の一角のようだ。
「WOODBERRY COFFEE」は渋谷や代官山など都内近辺に店舗があり、
ここ荻窪店はフラッグシップ店として2020年にオープンしたそうだ。
他店に比べて店内は広く落ち着いた空間で、
自家焙煎の美味しいコーヒーを味わえる。
店長に案内されて2階、そして3階へと階段を上がっていくと
屋上に見晴らしの良いテラス席があった。
下を見ると青梅街道。
だいぶ遠く先まで見渡せる。
さすがに今日の空気は冷たかったが、空を見上げると
陽の光が暖かく感じられて心地が良い。 先を歩いて行くと、
八丁交差点の角に鮮やかな赤と黄色に彩られたお店があった。
遠くからでもロールケーキやシュークリームの
大きなディスプレイ写真がよく見える。
洋菓子店のようだ。
お店の名前は「パティスリー ラ・プリュム」。
中に入ると定番のショートケーキやモンブラン、
可愛らしいオリジナルのケーキがたくさん並んでいた。
他にも焼き菓子やクッキー、チョコレート、選ぶのに迷うほど種類が豊富。
そしてお店の中央には「季節限定」と書かれた
赤鬼の顔のアイシングクッキーが籠の中にたくさん並べられていた。
そういえばもうすぐ節分だ。
「福」と書かれた星型のクッキーと一緒に
可愛い赤鬼が一緒にラッピングされている。
お店の方に聞くとクリスマス、お雛様、バレンタインなど
季節ごとに販売されるアイシングクッキーは子供たちに大人気のようで、
ちょっとした友達へのプレゼントとしても
お母さんと連れだって買いに来るそうだ。 「泣いた赤鬼」という昔話があった。
人間とどうしても友達になりたかった赤鬼は、
親友の青鬼に相談を持ちかける。
心優しい青鬼は自分が悪者役になって赤鬼と村人たちを仲良くさせようと考え、
見事計画は成功する。
しかし人間とは友達になれたが、
悪者となってしまった青鬼とはもう会うことが出来なくなり、
赤鬼は大切な親友を失ってしまう。
子供の頃、絵本で読んだはずだが
「泣いた赤鬼」というタイトルを聞いただけで、
今でもなんだか切なく悲しい気持ちになってしまう。
赤鬼のアイシングクッキーを手に取りながら、
不意にそんな昔話を思い出した。 幸いにも、このお店には泣き顔の赤鬼はひとりもいない。
みんな無邪気にニコニコと笑っている。
きっとこんな笑顔を向けられたら、
人間の子供たちもすぐに仲良くなってしまうだろう、
そんな気がした。

案内人:庄尾なつみ
写真はこちら

案内人

商店街。ひと、もの、あじ

商店街。MAP

  • ●住所
     ・杉並区桃井2丁目1−1

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