古い友人に会うために蒲田に来た。
待ち合わせの時間には、
まだ間があるので蒲田の町をぶらぶらすることに。
足が向いたのは蒲田駅の西口を出て
東急池上線の高架線路の脇に続く細い通り。
商店街名は「蒲田東急駅前通り会」。
通称は「バーボンロード」。
その名の通り、この通りには飲み屋がひしめいている。
居酒屋、小料理屋、BAR、スナック、焼き鳥、焼きトン、
中華、エスニック等々、飲食店の種類は多種多様だ。
友人と語らう店を探しがてら、
レンガが敷き詰められたバーボンロードを散策する。
流石に昼時のバーボンロードで
シャッターを上げている店は少ない。
BARの店先にはテーブル代わりの酒樽が置かれている。
居酒屋の前には空き瓶が詰まったビールケース。
電柱には「恒例 生ビール祭り！」の立て看板。
そんな通りに一軒だけ物販の個店があった。
店の名は「佐山青果店」。
店主が店先に果物を並べている。
聞くと暖簾を守るのは三代目。
店は蒲田近辺で90年近く続く青果店で、
蒲田東急駅前通り会が出来た当初から
今の地で商いを続けている。
個人の常連客の他に、
近隣の飲食店からの利用も多いとのことだ。
話を聞いている最中も居酒屋の主人が生姜を買いに来て、
店主と親しげに世間話をしている。
立て看板に書かれた「生ビール祭り」のことを店主に訊ねると、
イベントでは無料で生ビールを振舞うそうだ。
新春の1月には「鏡開き」も開催していて、
当日は菰樽を割って、無料で樽酒やビールを配る。
イベントもバーボンロードの名に相応しい内容だ。
店主は明日のビール祭りに来ればよかったのに、
と僕に笑いかけた。
待ち合わせ時間が近づいて来た。
中学時代の友人に逢うのは40年ぶりに近い。
白髪の僕が分かるだろうか、
などと考えながら駅の改札に向かう。
あいつと話すと14歳の頃の僕がグラスの底に揺れるんだろうな・・・

案内人:小林猛樹
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