新富町
有楽町線 新富町駅

新富商栄会

商店街一覧

大向こうが消えても、「いらっしゃい」の声は聞こえる。

東京メトロ有楽町線の新富町駅を出て、すぐ北側にある街が新富だ。
さらに北に行くと八丁堀。東には入船。南には築地。
西には銀座と京橋に囲まれた、
新富は東京ドームに収まるほどのこぢんまりとした地域だ。
今日はここ新富にある「新富商栄会」を散策する。
改札を出て歩き始めると大小のビルの間にポツリポツリと店舗がある。
洋食店や町中華、蕎麦店やイタリアンなど、
多彩な顔ぶれの飲食店の中に、趣ある佇まいの料亭があった。
新富は明治初期には遊郭があり、
かつては三業地として茶屋や置屋などが軒を連ねていた街だ。
その名残りを料亭の黒塀に見ることができた。
街には新旧の物販の個店もシャッターを上げている。
白い壁の店舗はイタリア菓子の店の「Litus」。
Litusはラテン語で渚の意味。
お洒落な店内には美味しそうな菓子が並んでいる。
鮮やかな赤い切り口のスイカが出迎えてくれる青果店は
「京橋プロデュース」。
店は新鮮な野菜や果物を求める客で賑わっている。
生花店の「花貞」を訪れると店内には奇麗なシャクヤクが。
「和牛黒毛サーロイン」「黒豚モモスライス」「大山むね」などと
書かれた貼り紙がガラス戸に所狭しと貼ってある店は「桑原商店」。
卸が基本だが小売りもしている精肉店。
銀座の有名なカフェ「パウリスタ」の豆を販売している店舗もある。
扉には新富倉庫と記されているので、
倉庫の一角で珈琲豆の小売りをしているようだ。
新富橋の近くに歴史を感じる二階家があった。
店には大野屋と書かれた大きな看板が掲げられている。
七代目が暖簾を守る「大野屋総本店」は250年以上続く足袋の店。
一階が店舗、二階で足袋を作っている。
足袋は新富形足袋と言って
舞踏の舞台などで足が美しく見えるように設えてある。
新富形足袋は舞踏家、能役者、歌舞伎役者などに愛用されている。
店には足袋の他にハンカチや小さな足袋のアクセサリーなども並んでいる。
近頃はインバウンドの客もよく訪れるそうだ。
新富には明治から大正にかけて芝居の劇場「新富座」があった。
当時の役者たちも「大野屋総本店」の足袋を履いて
舞台に上がっていたのだろう。
新富の街の片隅には赤い鳥居の新富稲荷神社があり、
民家の角には古い井戸もある。
一帯は関東大震災で焼け野原になったのだが、
先の戦争の空襲は免れたそうだ。
ビルの狭間に、黒塀、古井戸、赤い社、
都会の一角に凡そ一世紀前の匂いが残っている。

案内人:小林猛樹
写真はこちら

案内人

商店街。ひと、もの、あじ

商店街。MAP

  • ●住所
     ・〒104-0041 東京都中央区新富1丁目2−10

コメント

*が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

トップへ
街てく。