お茶の水
中央線 お茶の水駅

お茶の水茗溪通り会

商店街一覧

変わらない風景、今も学生たちが集まる街

JRお茶の水駅前の交差点に立つ。
長かった夏もようやく終わり、
季節がやっと秋へと変わろうとしている。
肌を突き刺すような強烈な日差しも和らぎ、
こうして信号待ちをしていても
暑さにうんざりすることもなく、
渇いた空気が心地良い。

今日は『お茶の水茗溪通り会』にやってきた。

「お茶の水」は学生の頃によく来た街だ。
この商店街もこれまで何度か訪れたことがある。
久しぶりに歩いてみると昔の記憶が景色に重なる。
もう数十年前のことなので、
並んでいる店は新しく入れ替わっているが、
雰囲気はあの頃のままだ。変わらず本屋の『丸善』もある。
よく大学の友人たちと立ち寄っては、
勉強とはまったく関係のない本や雑誌を見て回った。

商店街を歩いていると雑貨屋さんだろうか、
入り口に置かれたラックに
ポストカードがたくさん並べられている。
お店に入っていくと絵具や筆、
カラフルなマジックペンがきれいに整頓されて置かれている。
画材を扱っているようだ。
お店の方に話しを聞かせてもらった。
『レモン画翠』は、建築やインテリア模型のパーツや材料、
製図用品などを販売しており、
昨年で創業100年を迎えた老舗店だ。
外観だけ見て、よく知りもせずに入ってしまったことに恐縮してしまった。
「お茶の水」という土地柄から、お客さんは学生が多いのかと思ったが、
やはり専門店なので、建築や設計に関わる人が多いそうだ。
階段を昇っていくと、各フロアには模型用の材料や工具など、
あまり目にしたことのないような珍しいものが並んでいた。

『レモン画翠』を後にして、少し商店街を歩いた。
喉が渇いたので、駅近くのファストフード店に入った。
店内を見渡すと席がまばらに空いている。
背もたれのある端っこの席に歩いていき、
ドリンクを乗せたトレーと荷物を置いた。
少し歩き疲れたので、席についてひと息ついた。
ふと周りを見渡すと、ノートPCを開くサラリーマンもいるが、
やはり近くに通う大学の学生だろうか、
若い子たちが数人で所々、固まって座っている。
バンドでも組んでいるのか、長髪姿でデニムの腰回りに
じゃらじゃらとアクセサリーを付けた子がいたり、
真面目そうに顔を付き合わせて話し込んでいる子たちもいる。
どんなことを話しているのだろう?
会話を想像しながら眺めていると面白い。

あの頃の自分たちも、あんな風だったのかもしれない。

ようやく長い午後の講義が終わり、
机の上に広げた教科書やノートを早々にカバンに突っ込む。
すぐさまアルバイト先に走る子もいたが、
なんとなく暇そうにしている子たちに声を掛ける。
数人で連れ立ってキャンパスを離れ、
一駅二駅とのんびり歩きながらこの街までやってくる。
座れそうなカフェに入ってお茶を飲む。
ケーキを突きながら取り止めもない話は尽きず、
辺りが薄暗くなるまで友人たちと賑やかな時間を過ごした。

思い返してみても、
たいして生産性のない話を長々としゃべっていたと思う。
いつも何をそんなに話し混んでいたのかは全く覚えていない。
ただ、友人たちと過ごしたあの時間はとても穏やかで、
忙しない毎日の中にいる今の自分には得られないような、
特別な時間だったように思う。

ふと前を見ると、さっきまで二、三人で座っていた学生たちが
倍以上の人数に増えている。
どうやら次々と友人たちが合流してきているようだ。
相変わらずみんなで楽しそうにスマホをのぞいたり、
隣の席に足を投げ出しては大笑いしている。

今も昔も、取り止めのない話は止まらない。

時が流れても今もあり続ける老舗店、
そして新しい店に入れ替わっても変わらぬその雰囲気は、
私の懐かしい記憶を思い出させてくれた。

案内人:庄尾なつみ
写真はこちら

案内人

商店街。ひと、もの、あじ

商店街。MAP

  • ●住所
     ・千代田区神田駿河台2丁目 茗渓通り

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